ここでは、毎月発行の新聞にも掲載されています好評の「ナビゲーター」を紹介させていただきます。
 
 
 
2000/09/25
  「いま!」の売り方
2000/09/10
  「いま!」を売っていますか?
2000/08/25
  お店の見方
2000/08/10
  マネジメント2
2000/07/25
  マーチャンダイジング2
2000/07/10
  マーケティング2
2000/06/25
  マネジメント1
2000/06/10
  マーチャンダイジング1
2000/05/25
  マーケティング1
2000/05/10
  経営は「3本柱」で考える。
 
本誌掲載
2000/09/25
「いま!」の売り方
今!買いたくなるようなマーチャンダイジング
 
前回は、「今」を売らないと売上が上がりません。という話をしましたが、今回はマーチャンダイジングの第3回として、「売り方」を具体的に解説していきます。ぜひ、店内のマンネリ化をうち破ってください。
●店頭の考え方
店頭こそ「今!」を売る絶好の場所です。店頭というのは、お客さんが店に来る時、帰る時に絶対に通る場所ですから、季節商品の展示、処分的なセールなどは、それぞれの部門で行うより店頭で行うのが最も効果的です。
ただし、お客さんが必ず通る場所だからこそ、ひとつのセールを長々とやってしまうと、お客さんの印象を逆に悪くしてしまいます。最長でも1ヵ月で次のイベントや展示に替えてください。
●レイアウトの考え方
当然、レイアウトも店頭に近いほど、商品の入れ替わりが激しい筆記具やカード類を配置します。システム手帳を店頭に置いている店をよく見かけますが、変化をもたせにくいため奥にすべきでしょう。
●価格の考え方
価格訴求をするときは、期間を限定することが大切です。特に最近は、驚異的な価格訴求で進出してくる企業もありますが、まともに価格を合わせたのでは、地域の平均価格だけが下がり、その後の商売が成り立たなくなります。割引期間を設定することで、お客さんに買い時であることを訴求するとともに、その後価格を戻す理由となります。  また、価格訴求といえば、ついつい「処分」と考えがちですが、むしろ商品によっては、シーズンの導入期にあえて数量や期間限定で割引することも大変効果的です。売上も心配するほど下がりません。
●セールの考え方
割引セールやポイント(チケット)2倍還元などのイベントは、慎重に行ってください。あまり定期的に行うと、最初はいいのですが、そのうち売上がセールの日に移動してしまい、全体の売上が上がりません。その上、止めることもできなくなってしまいます。 定期的なセールは少なめにし、不定期なセールやイベントを織り込むことで、お客さんに意外性を印象づけることができ、来店動機を増やすことになります。
もちろん、事前には販促を行うのですが、折り込みチラシだけに頼らず、ポスティングやレジでの手配りなど、ローコストを意識しないとコスト倒れになることも心配されます。
●陳列の考え方
なんといっても「見た目」を重視してください。たとえば色のきれいな商品であれば、機能で分類せず、色で分類するコーナーも効果的です。また、色による訴求では、商品をどのように陳列すればいちばんキレイに見えるかを考えて並べなければなりません。
●POPの考え方
訴求をする上で大切なのはPOPです。注目を引くことは当然ですが、お客さんに「今、買おう!」と思わせるためには、様々な工夫が必要です。
目立たせるためには、色や大きさだけでなく、見せる方向も重要で、棚に対して垂直にPOPを付けると遠くからでも目を引くことができます。また、POPの内容でも、ケース単位や箱単位でセールをする際は、1個単位や1枚単位の価格を割り出すことで割安感を演出します。
これらのPOP技術は、最近の百貨店、量販店、ディスカウント店などに相当なヒントがあります。いかにも安売りといったPOPではなく、イメージを落とさないPOP技術を学んでください。
●細かいコツ
もちろん、現場においてはこまめに商品を移動させることが必要です。売れない理由は、価格でも商品でもなく、ちょっとした場所の悪さだったりするからです。  明日と言わず、ぜひ今日から取り組んでみてください。
                              加藤経営研究所 加藤泰輔
 
本誌掲載
2000/09/10
「いま!」を売っていますか?
「今」買わなければいけないモノを売っていますか
 
「なぜ、文具小売店の売上が上がらない?→不景気とITで文具を使わなくなったから」。
どこでも聞く話ですが、実は×(バツ)。採点は0点です。そんな答えで納得しているようでは、失礼ですが、先に見えるのは廃業だけです。
他業種の成功事例を見てみると、もはや「モノ」を売っていません。マーケティングの第3回は「何を」売るのかについてです。以下を読むことで、まだまだあなたのお店も売上を上げられます。
●今買わないと…
先日、アウトレットショップのSCに行ってきたのですが、その人の多さに驚きました。 確かに車で行けますし、休憩スペースも多いので、家族連れには好都合です。また、店側もそれを意識してか、子供用商品を多く品揃えをしていましたので納得です。
しかし、価格はと言えば、確かに安くはなっていますが、実はデパートのセールより安いという程ではありません。それほど最近のデパートはがんばっているせいでもありますが…。それでは、なぜ、アウトレットに人は集まるのかといえば、「アウトレット」という言葉のイメージです。
アウトレットという言葉から、訳あって安い、限定品→今買わないと、もう買えない→「今買おう!」といった購買動機につながっているのです。「閉店セール」も同様です。 言うまでもなく、現在はモノで溢れかえっていて、今更絶対に買わなければならないものなどありませんし、多少必要でも買い控えるような時代です。
こんな時代でも売上を上げようと思っているのなら、必要なことは、売場の中に「いま!」を訴求することです。期間限定、今月のお買い得商品、先着○名様など、ほんのわずかでもお客さんに「今買うこと」を意識してもらうのです。その「わずか」が、売上を必ず上げます。もちろん、言うまでもなく、納品でも同じことです。
●店内を歩き廻るお客さん
私は、お客さんの後ろを付いて歩くことがあります。
お店の問題点を見つけるときに最適な方法なのですが、文具店ではおもしろいことに、うろうろしているお客さんが多いのです。これは何も、店がわかりづらいといった訳ではなく、お目当ての商品を手に取っても、店内を見て廻っているのです。おそらく、お客さんは商品を見ることで「そういえば…」を思い出そうとしているのだろうと考えます。 確かに文具は、お客さんの仕事(生活)の中でメインではありませんから、必死になって買っている人はいませんが、あれば、オフィスや家庭を便利にしてくれることも知っているのです。
しかし、お客さんが、店内を見てくれるのにも関わらず、ほとんどの店がPOPどころかプライスカードも少なく、商品が並んだ棚が死んでいるようです。店内が「倉庫」のようで「売場」にすらなっていません。
少なくとも、90?の棚なら、その中で1品でも新商品や、価格訴求の商品がお客さんの目を引くように訴求がなされていないといけません。たとえ1品づつでも、店内の表情は相当変化します。
技術的なことを言えば、目の前を歩いているお客さんだけでなく、メインの通路からも見えるように訴求し、棚の中へ誘導しなければなりません。カギになるのは、エンド什器(中棚の両はじ)で、お客さんの目を引くようにハデに飾り付けることです。
さらに、IT時代にふさわしく、ホームページやメールの活用も考えられます。相場モノのPPCなどを拡販するときに、いちいちDMを打ったのではタイミングも遅れますし、コストも合いませんが、メールを活用すれば、簡単でしかも驚くほど低コストで販促できます。
何度も言いますが、売上が上がらないのは環境のせいではありません。努力次第で上げることは可能ですし、文具小売業は、まだまだ世の中で必要な存在なのです。
                              加藤経営研究所 加藤泰輔
 
本誌掲載
2000/08/25
お店の見方
〈店舗視察の極意〉 異業種にはヒントがたくさん隠されている
 
このコラムは、経営の要素をマーケティング、マーチャンダイジング、マネジメントだと仮定し、それぞれを2度ずつ解説してきました。なるべく読みやすくしようと努力したのですが、どうしても経営の話であるだけに、内容が堅くなってしまったことも事実です。 そこで、今回は読みやすい話題として「お店の見方」をテーマにしました。しかし、その意味は決して軽いものではありません。
今の環境を一口で言うなら、あなたのお店ではなくても文具を手に入れる手段がたくさんある時代だ、ということです。その中で自店に来てもらおうとするならば、よほどの仕掛けがなければならないのです。
この「仕掛」は他店から学ぶことができますし、自店では思いつかないことを発見しなければなりません。
以下を経営者だけでなく、スタッフにも見ていただいて、社員教育にも使ってもらえればうれしいのですが…。
●異業種を見る
店を見るというと、どうしても文具店を見る人が多いのですが、この際、見ないでください。というのも極端ですが、できるだけ異業種を見てください。なぜなら、流通業の大きな流れの中で、文具店は決して先端にはいません。流通業の最先端のノウハウを文具小売業に移植することが大切なのです。だから、たとえば銀座に行ったら文具店だけでなく、他の小売店や飲食店も見てから帰ってください。
●いいところを見る
店で仕事をしていると、ついつい他の店の悪いところばかりが気になります。しかし、そんなものを見ても何の役にも立ちません。あくまで、いいところを捜す(少なくとも3つ)ことを心掛け、店内を歩き回ってください。そして、そのいいところを、いかに自店なりに出来るかを考えてください。
●お客さんになって見る
同業者のつもりで見てはいけません。お客さんになって、お金を払うつもりで売場を見てください。実際に買物をするといいです。
●どんな工夫があるか
最も大切なことは、その店がお客さんのためにどんな工夫や演出をしているかということです。外装、内装、商品構成、価格、陳列、POP、レジ接客、その他のサービスなどにおいて、経営者やスタッフの意志がどこまで具体的な形で、お客さんに買いやすいようにされているか、そしてそれを見たお客さんが、どんな反応をしているかを見てください。 ポイントは、個人的な好き嫌いで見ないことです。あくまでお客さんがどんな反応をしているかが大切で、店の善し悪しは、専門家ではなくお客さんが決めることなのです。
●具体的なお店の見方
まず、外から見ます。一般的に線対称の店は入りやすいと言われています。看板の形や色も大切です。中に入ったらまず、ぐるっと一周してください。導線(通路)を歩き、主導線(メイン通路)での売り方を見ます。
一周したら入口付近を重点的に見てください。この入口付近はたいへん重要で、繁盛店ほど入口付近でお客さんが立ち止まり、商品を手に取っています。また、店内では「どうやってお客さんの気を引くか」について工夫しているところを見てください。レイアウト、照明、販促物、色、音などさまざまな工夫によって、売場にアクセントを付けていないか見てください。
●楽しそう?
最後に、結果として繁盛店ほどお客さんばかりでなく、スタッフも楽しそうです。接客サービスは、ある意味商品以上に大切な要素かもしれません。  結局、笑顔こそがお客さんを集客する最大の方法なのではないでしょうか。
●まとめる
帰ったら、忘れないうちに、簡単でいいから見たままをまとめてください。そしてそれを自店でできるように「変換」して、実行することができたら、お店は必ず良くなります。
                              加藤経営研究所 加藤泰輔
 
本誌掲載
2000/08/10
マネジメント2
〈評価制度を変えよ〉 売上、粗利だけで賃金を決めていませんか?
 
マネジメントの中でも重要なのが「ヒト」の管理です。
人材の能力は、商品力や資金力よりも売上を左右します。これは納品の営業のみならず、店頭でも重要です。
また、これから生き残る文具店の条件を考えても、小売においてはチェーン店化が前提になりますし、納品も規模のメリットを求めて従業員を増やすことも必要です。その際に、経営者が全てに目を配ることはできませんから、優秀な人材を確保することは、生き残る条件なのです。
しかし、経営者が求めるような優秀な人材は、なかなか確保できません。失礼な言い方ですが、少なくともソニーや東京海上に入社するような優秀な人材は文具小売店には入ってこないものです。そのため、今の人材の能力を最大限まで引き出さなければならないのです。逆に人材育成が成功すれば、たとえ学歴が中卒でも、同年齢の大卒よりはるかに優秀な人材に育つ例も私は見ています。
●目標の立て方
目標を売上や粗利で立てることがよくあります。これは悪くないのですが、今日の環境の中で売上や粗利の目標は達成も難しく、これだけの評価では人材開発もできません。
なぜなら、売上や粗利は結果ですが、結果が出せない場合は、その過程に問題があるわけです。しかし、経営者が結果だけを求めても社員に解決する能力があるかといえば、難しいのではないでしょうか。そのために、結果より過程を管理しなければ、いつまでも結果が出ないのです。
過程の管理をする上で大切なことは、必ず「指標化」することです。例えば見積もりの件数や新規顧客のリストなど、必ず数値化できる指標でなければ客観管理できません。
また、大切なことは、小さくても「成功」を体験させることです。その成功体験を経営者が評価してあげることで、自信につながり、やがて大きな成功になるのです。
●評価制度との連動
目標を立てたら、それを評価しなければなりません。ポイントは「褒めるときは人前で、叱るときは個別に」です。また、最も悪いことは、業績レースを社内で行うことで、これをやってしまうと社員は絶対に他の社員に協力しなくなり、情報を隠し持ってしまうため、やめるべきです。
また、評価をするということは、会社の方針でもあります。例えば「パソコンを使うように」といくら指導をしても、今まで使わなくても仕事ができたのですから、詳しくなければ使うはずがありません。そこで、使わなければ仕事ができないようにしてしまうのです。
実際に「手書き見積書の禁止」を実施した例では、従業員はしょうがなくでも使うようになります。あるいは経費の精算をパソコンからでしか受付けないようにする例もありましたが、お金がもらえないので皆必死で使います。
●自分でも評価する
評価は通常、上司がすることになっていますが、これは上司の主観が入ったり、上司の基準で行われてしまうことがあり、社員はどんな評価に対しても疑念を持ちます。そのため、上司の他に本人も自分の評価をする方法があります。最終的には本人と上司が面談をすることで、会社が求めている貢献と自分が意識している貢献がズレないようにすり合わせることができます。
●頻繁に評価する
評価は、最低でも月1回は必要です。面接形式で行うことで個別の問題点について1対1で話し合うことです。  朝礼などでは、どうしても一般的な話しかできずに社員の個別の問題を突き詰めることができません。
また、面談によって、目標に対する進捗状況を確認すると共に、自分で評価し、次への修正をすることができるのです。お菓子などを置くなどして、気楽な雰囲気が大切ですし、場所を変えてリラックスしてもいいと思います。                               加藤経営研究所 加藤泰輔
 
本誌掲載
2000/07/25
マーチャンダイジング2
〈売れているモノは2フェイス〉 売れ筋商品の強化が売上を上げる
 
今回は、マーチャンダイジング(以下MD)の第2回です。
MDとは仕入から販売までの全ての行程ですが、一般的に小売業で特に問題になるのが「陳列」です。陳列次第で売れ行きが変化するだけに、関心が高いのかもしれません。
実際、ある店では売れ筋の商品が、別の店では売れてないことは、文具小売店でも筆記具などでよくあることです。  しかし、文具小売店では陳列があまり問題になっていません。圧倒的に売れる単品が少ないのも原因ですが、そこまで関心がないのか、どう見ても、取れるべき売上をロスしている店も多いように見受けます。
ラッキーにもこのコラムを読んでくださった方は、是非とも実践していただければ、売上を上げることは十分に可能です。
● 売れ筋とは何か
陳列を変える前に、まず「売れ筋」はどれかを知らなければなりません。
売れ筋商品とは、よく売れている単品のことですが、意外と認識されていません。例えばボールペンの売上は、黒が60%以上、そして赤、青と続きますが、青は黒の10分の1も売れません。しかも同じ黒でも、売れている品種が決まっているはずです。
しかし、売れ筋管理をしていない店では、すべての商品を1マスずつ陳列していて、青が古くなっているのに、売れ筋の黒が欠品している店さえあります。つまり、陳列を考えるときは、売れ筋は何かを明確にしてから、その商品を中心に商品構成と在庫量を考えなければなりません。
ただし、自店のデータだけで決めてしまうと、メーカーが偏っている場合も多く、他店も参考にしなければなりません。
● フェイスについて
売れ筋を決めたら、そのフェイスを増やします。フェイスとは、お客さんから見た商品の幅です。例えば修正液をフックで陳列している場合は、売れ筋の単品をフック1本から2本に増やします。つまり売れ筋が2フェイス、その他が1フェイスになるわけです。さらに売れ筋にPOPを付ければ完成です。筆記具であれば、アクリル什器の使い方で、売れ筋を2マス、他を1マスといった具合です。
● 商品管理に活かす
売れ筋管理をすると、2つの効果が期待できます。
ひとつは、お客さんに対する訴求効果で、何を買ったらいいかわからない場合は、必然的に売れ筋を手に取る率が高まり、買いやすい売場になります。
もうひとつは、スタッフに対しての教育効果です。
2フェイスでPOPが付いている商品は売れ筋だと決めることで、担当者は売れ筋中心の在庫管理をすることができます。発注を多めにしたり、店頭が欠品していれば、すぐにストッカーから出さなければなりません。また、店頭在庫量を増やすことで、補充の回数が減り、生産性が上がります。逆に言えば、見せ筋の商品は発注をシビアにすることにもつながり、トータルの在庫量を減らすことにもなります。また、自分の担当以外の売場がわかるという効果もあります。
● 納品に活かす。
これからの納品は、頼まれた商品を納品するだけでは生き残っていけません。
営業も売れ筋を理解することで、提案営業をする第一歩にしなければなりません。ただし、店頭と納品では売れ筋が若干違います。これは知らなければなりませんし、納品の残りを店内に入れてしまうと、死に筋商品になる場合もあり、売場が死んでしまいます。
以上のように、売れ筋管理をすることは、商品を見直すいい機会にもなります。2フェイスにするということは、場合によっては何かを削らなければならないこともあり、一品一品の見直しが必要になります。
これからの小売業は、きめ細かい商品管理をすることが大前提です。ぜひ「売れているモノは2フェイス」を合い言葉に、店内を見直してください。
                              加藤経営研究所 加藤泰輔
 
本誌掲載
2000/07/10
マーケティング2
〈柱の数を増やす〉 〜新しいことを始めなければ生き残れない〜
 
冒頭からいきなりですが、相変わらず文具業界は明るい話が少ないようです。ただ、景気が上向いていることは間違いなく、現場を訪ねていても、他業種では昨年の2月位から業績を上げ始めました。
つまり、文具の需要そのものが拡大していない可能性が高く、自社を成長させるには他社のシェアを奪わなければならないということになります。
今回は、マーケティングの第2回として、このような「ゼロサムゲーム」時のノウハウについて解説します。
● 文具は儲かる!?
TVのCMを見ていても、文具のCMは他に比べて少ないです。
CMに限らず、文具の宣伝は少ないのですが、これは、商品が成熟していることが一つの理由です。しかし、逆に言えば、宣伝がなくても安定的に売れる商品でもあります。ある日突然、あるメーカーのファイルが全く売れなくなる。なんてことは起きないわけで、文具とは安定している利益率の高い商品だといえます。しかし、今後は競争の激化と電子技術の発達で、文具は徐々に衰退していくことが明白なだけに、何か新しいことが必要なのです。
● 儲からないことをする
成長している企業を見ると、それがどんな業種であれ、共通して行っていることがあります。それは、現業を軸としながら、一方で新しいビジネスをいくつも立ち上げて、どれか一つでも太い柱になるように投資していることです。ところで、お読みの皆様は、そんな新しい柱を育てているでしょうか。今すぐ儲からなくてもいいのですが、数年後に儲かるだろうと思うビジネスを始めているでしょうか。「今日の売上に苦心していて、それどころではない」なんてお考えなら、重傷です。
終わってしまった企業のほとんどが、現業のビジネスの衰退に対して、代替ビジネスを立ち上げていないか、立ち上げたものの、間に合わなかったのです。
● 新しいビジネス(柱)とは
では、どのように柱を増やせばいいかというと、一つは扱い品種の拡大です。スーパーは昔、八百屋だったり魚屋だったものが、徐々に扱い品種を増やすことで総合的になったものです。
例えばコンビニは「あったら便利な商品」というコンセプトで、店内の商品は雑誌、総菜、化粧品、コピーと様々ですが、誰も変だとは思いません。文具店も総務関連の商品を扱う所だと解釈すれば、ティッシュを売っていても不思議はありませんし、野菜でも米でも構いません。実際に置いているところもあります。
また、小売の商品ばかりでなく、サービスを新しい柱にする方法もあります。一般的なところでは印刷加工やDPEですが、私個人的には喫茶店を開いてもいいのではないかとさえ考えています。
最近何かと話題になっているIT関連であれば、インターネットは必需品です。もちろんホームページを作ったからといって、ビジネスになるとは思いませんが、次世代のツールとして、電話のように使われることは疑いがありません。現在は関係がないからといって遠ざけていると、この先の大きなチャンスを必ず逃してしまいます。
● 柱を増やすときのポイント
柱を増やすときのポイントは、自店の存在意義を再検討して、潜在的需要を掘り起こすこと。つまり、企業としてのビジョンを考えた上で、今までにない商品(サービス)を取り入れることです。また、もう一つは自分の好きなことを新しい柱とすることです。何を始めるにしても、やる人によって成功も失敗もします。万能なものはありませんので、自分の好きなことで工夫を重ねることが成功のコツです。
経営が「ゼロサムゲーム」になっている時には、同業者の売上を奪うのではなく、異業種への参入や潜在的な需要を掘り起こすことで生き残ることができます。
                              加藤経営研究所 加藤泰輔
 
本誌掲載
2000/06/25
マネジメント1
「経営者がすべて」の法則〉 経営は経営者によって100%決まってしまう
 
今回はマネジメントの第1回です。マネジメントとは経営の三大要素である「ヒト・モノ・カネ」の文字通り「管理」のことです。マネジメントは最近特に重要視されており、90年代以降はマネジメントの時代だとも言われています。つまり、商品や売場を小手先で変えただけの売場管理が通用しなくなり、売場から臭う従業員のやる気さえも感じてしまうほど、お客さんが日々賢くなってきているということです。
ところが、従業員は賢くなっているでしょうか?もっと言えば、経営者はそれ以上に成長し続けているでしょうか?
実は、小売店に限らず、時代の変化に対応できていない、つまり成長が止まってしまった企業は、100%と言っていいほど経営者に責任があるのです。
● ビジョンが必要
従業員が辞めるときは、待遇面や仕事内容の不満が表向きの理由ですが、よくよく聞いてみると、本当は人間関係の問題だったりします。しかし、潜在的な第一の理由は「この仕事を通じて、自己の成長が期待できない」ことです。具体的には、何年やっても自分が成長していないと感じたり、このまま仕事を続けても会社の成長が望めない時です。それほど人間とは成長を認められないと生きられない動物だと考えてもいいかもしれません。 つまり、経営者が従業員の成長を評価したり、企業を成長させながら、常に「夢」を語り続け、数年後の姿をイメージ化させなければいけません。
そのためには、経営者に大きなビジョンが必要であり、今のビジネスがいかにすばらしいかを何時間でも語れるほどでなくては、やる気など引き出すことは不可能なのです。 ところが、文具業界、特に小売店からはFC展開や店頭公開などの夢のある話があまり聞かれないのが不安なところで、もしも事業計画すら立てていないとすれば、致命的だと思ってください。(流行語で言えば「ダメダメ」です)
● リーダーシップが必要
経営者というのは、国で例えれば首相です。普通、首相は問題があれば辞任しますが、経営者というのはまず辞任しません。実はこれが最大の問題です。
よく、業績悪化の理由を従業員や外的環境に求める経営者がいますが、実は100%経営者の責任です。ところが辞めませんから、その経営者がいる限り、悪くなり続けます。
特に、国民に尊敬されない首相の国が滅んでいくように、従業員に尊敬されない経営者の会社がうまくいくはずがありません。なにもカリスマになれいうことではありませんが、信頼されるために必要な資質とは、第一に「聞き上手であること」です。本人に「気づき」を与えるように話の方向を誘導できる技術です。ポイントは言い訳を引き出すような質問をしないことです。従業員はその場で考えた言い訳を自分でも聞いてしまい、それに納得して以後も改善はされないからです。
第2に「誉め上手であること」です。誉め上手とは、長所を見つけられることです。ついつい従業員を見ると欠点ばかり見えるのですが、欠点を指摘してもまず直りません。誉められれば、従業員は経営者から関心を持たれていることを確認し、経営者が自分に何を期待しているかも理解します。
よく、顧客満足などと言われていますが、従業員が経営者から「満足」を受けていなければ、お客さんに「満足」を提供するはずがありません。逆に、従業員が気分良く働ければ、顧客満足はほとんどできたも同然なのです。なにより、上手に誉めることができれば、コストゼロでやる気を引き出せるのですから、ぜひ上手になってください。
とかく経営者は孤独なものです。最終的には経営者自身を誉めてくれる人を捜すことも、冗談のようですが、大切なことです。
                              加藤経営研究所 加藤泰輔
 
本誌掲載
2000/06/10
マーチャンダイジング1
〈レイアウトの役割〉 通販や量販店に負けないレイアウトとは
 
今回はマーチャンダイジング(以下MDと省略)の第1回です。MDとは仕入から販売までの一連の行為すべてのことですが、MDの中でも店売りで特に重要なのがレイアウトです。昨今の通販や量販店の躍進で、小売店におけるレイアウトの意味は変化してしまいました。以下をお読みの上、ぜひレイアウト改装をお考えください。
●レイアウトの役割
素材を自ら加工し、付加価値が付ける飲食店と違い、文具小売店は商品そのもので他店との差別化ができません。それだけに、同じ商品を売っていてもレイアウトによっての差別化が生き残りの絶対条件なのです。
そして、時代の変化に応じてレイアウトの役割も変化しました。商品を並れば売れた時代から、捜しやすく見やすい売場が求められ、最近ではビジュアルMDなどという言葉まで現れ、見た目の良さまで求められています。
しかし、通販や量販店の躍進とは、実は売場や商品説明そのものが不要だという消費者のメッセージだとも考えられ、現在のような商品を並べただけのレイアウトでは、見た目が良くても今後はお客さんを呼ぶことができないということです。
そこで、新しい時代に求められるレイアウトとは何かを考えなくてはいけません。一つの仮説として私が提案しているのは、「お客さん体験型レイアウト」です。
● お客さん体験型レイアウト
最近の商品は、文具に限らず食品も衣料品も、外から見ただけでは品質がわからないほど高度になっています。そこで試食や試着によってその善し悪しをお客さん自身が体験して判断しているのです。ある店ではマウンテンバイクを売るために、実際に試乗するコースまで作ってしまい、たいへん話題になっています。
文具でも商品の性能や種類は年々複雑になっているにも関わらず、体験できる商品数もスペースも少なすぎるのです。
そこで、ショールーム的にファイリングやデスク廻りの小物を展示したり、性能の優れた商品を試すコーナーを作ったり、見本を出すことで、お客さんは使ったことのない商品を知り、使った時のイメージ化をする機会になります。これは明らかに通販や量販店ではできないことで、お客さんは、『わからなければ、あの店に行こう』と思うようになり、お店に対しての意識を変えるようになります。
つまり、これまでのように、売場といえば商品でいっぱいにするというのではなく、商品を置いていない「非売場」のスペースづくりが重要になるということです。
● レイアウトの基本
それから、レイアウトの基本としては、「入口付近が大切」です。入口はその店の顔であり、繁盛店ほど入口付近の売上構成比が高くなっています。できれば平台を置いて一ヶ月単位でフェアを催すことが大切です。まちがっても特価商品を売るような捨て場にしてはいけません。
また「主導線と副導線」もはっきりさせなければなりません。通路幅は最低でも90センチは欲しいところですが、特に主導線においては、通路に回転什器がはみ出ていたりすると、心理的に歩きにくくなり、買い廻りをしなくなります。  什器の配置は基本的に「碁盤目状」にしなくてはなりません。時々凝った設計の店に行くと、斜めに通路が走っているところがありますが、お客さんから見た目にも、スタッフの作業効率を考えても正しくありません。  また、とても重要なことですが、「レイアウトは変えるものだ」という認識を持つことが必要です。最初に設計したレイアウトが正しいということは100%あり得ません。修正も必要ですし、時代の変化にも対応しなければなりません。簡単な商品の移動を含めれば、1年間レイアウトを変更しないということは、あり得ない話だと思って下さい。
                              加藤経営研究所 加藤泰輔
 
本誌掲載
2000/05/25
マーケティング1
〈「誰」に「何」を売っているの?〉 この解釈を間違えると、永遠に売上は上がりません
 
前回も申し上げたように、経営はマーケティング、マーチャンダイジングとマネジメントの3方向から見れば、現状の原因も対策も見えてきます。
今回よりこの3つを具体的に解説していきたいと思います。
まずはマーケティングの第一回です。この言葉は、あまりに有名すぎて言葉だけが一人歩きをしています。意味についても様々な解釈があるのですが、私は「誰に何を売るか」を考えることがマーケティングだとしています。
しかし、マーケティングは意外と軽く考えられています。例えば問屋さんの営業マンに「なんか、売れるモノないの?」なんて聞いている場面を見ますが、これも立派なマーケティングなのです。ただ、こんな調子ではうまくいきませんので、この先を読んでお役立てください。
●マーケティングの原理
マーケティングの原理は非常に単純です。一方でお金を持った消費者が、商品を求めています。そしてもう一方で商品を持ったお店が、お金を求めています。消費者とお店が出会ったときに取引が成立します。しかし消費者の欲しい商品は人によっても、TPOによっても違いますから、誰に売るかということと、何を売るかについて、突き詰めて考えなければならないのです。これを間違えると消費者と出会えなくなりますから、売上がドンドン下がります。
●誰に売るのか
まず「誰に」ですが、ここでのポイントは「地域」と「特定化」です。
地域とは立地している周辺の特徴です。お客さんの層だとか競合の度合いによって商品(例えば販売単位)や価格が変わります。立地から考えることで、売価は定価から発想するのではなく、周辺の相場から考えなければなりません。これは通販や量販店対策でもあります。「特定化」とは、買ってくれたお客さんについてわかることで、名前や住所、過去の購買履歴などが属性です。お客さんが誰だかわからないとすれば、それは「不特定な消費者」です。「特定化された顧客」となっていれば、個別の顧客に個別の対策をたてることができるのです。
手法としては、サービスチケットよりはポイントカードの方がリストは取りやすいはずです。ただし、最近ではポイントカードはどこでも当たり前になっていますから、始めただけではアドバンテージにはなりません。DMやEメールで個別の顧客に個別の案内ができるようにならなければポイントカードも無意味です。
●何を売っているか
結論から言えば「モノ」ではないということです。逆から見るとお客さんはモノを買っているのではないということです。鉛筆を買う人は、鉛筆を収集しているのではなく「書く」目的のために鉛筆を買うわけです。書くための手段として買うのですから、必要に応じてシャープペンになったり、果てはEメールでもいいかもしれません。 現在躍進中の小売業を見ると、モノ以外の要素でお客さんに支持されています。ユニクロは安く売っていますが、他のカジュアル衣料店のように安っぽく売っていません。ブランド化されたお店で、堂々と安い服(ユニクロというブランド)を買っているのです。 東急ハンズには何でも置いてあるとお客さんは思っていますが、実際は無い物もたくさんあります。ハンズが上手なのは、他では回転率を考えてカットしてしまう商品を、あえて集めてくるということと、買う側の立場に立った商品提案ができているということです。つまり、お客さんは「安心感」を買っているので、定価だろうがほとんど気にしません。 このように、誰に何を売るのかを突き詰めて考えると、扱う商品や、売り方も変わってくるはずなのです。
次回はマーチャンダイジング1「レイアウトのABC」をお送りします。
                              加藤経営研究所 加藤泰輔
 
本誌掲載
2000/05/10
経営は「3本柱」で考える。
(経営を3つの方向から考えれば、活路は必ず開かれる)
 
新年度シーズンも一段落しましたが、お店の方からお話を聞いても、好調であったという話はほとんど聞きません。一方、他業種では、業界のリーダー的企業が新規出店を加速させて、株式公開をするニュースも相次いでいます。
それに比べ、どうも文具業界はパッとしません。これは、かつて時代の流れの中で、映画→テレビ、電車→自動車、レコード→CDといった、産業の転換があったように、文具も、紙やインクから電子情報に転換している最中だということかもしれません。そういえば手書き書類が激減している企業も増えましたし、何でも電子化されてしまえば、ペンも紙もファイルも…考えただけでもゾッとしますが、すぐそこまで来ているような気もします。
こうなってくると、本業重視とばかりに、今をコツコツと生きていれば未来は開ける…とは言えなくなってしまいました。また、生き残りをかけようとして、小手先のリストラや販促などをしても、思ったほどの効果はありませんし、安易にやってしまうと、とんでもないことになります。先日も、場当たり的にリストラをしたため、優秀な人材に辞められてしまい、人材募集をしているけど、いい人が集まらない!?といった妙な話を聞きました…。
だからといって、よく、「抜本的に…」とか「構造改革」などと言葉だけが先行していますが、前例もないのに現状を急に変えろと言われても、それはムリです。社長の血液を入れ替えて、血液型(性格)を変えるなんて、現実にはできません。 しかし、血液の入れ替えは不可能でも、企業の再生は、考え方を整理さえできれば、実は可能なのです。
大切なことはできるだけ単純化して考えることです。「この業界は特別」や「ウチの店は他とは違う」と考えたらその自店で無理。同じ人間のすることですから、構造は実にシンプルなのです。
そして、経営の要素をできるだけ単純化するとしたら、それは3本柱でまとめることができます。その3本柱とはマーケティング、マーチャンダイジングとマネジメントです。マーケティングとは「誰に何を売るか」であり、マーチャンダイジングは「発注から販売まで」の全ての行為。そしてマネジメントは「人、物、金の管理」のことです。これは製造、卸、小売に関係なく、零細企業でも大企業にでも当てはまるのです。
この3つの要素については、これから少しずつ解説していきますが、このなかで最も大切なものは何でしょうか?。私はバブル崩壊以降、商品でも売り方でもなく、マネジメントが最重要だと考えます。そしてマネジメントの中でも、特に「人」の管理が重要です。 あるお店が、開店前に店の前で「おはようございます」と大きな声であいさつを始めたところ、それまでモタモタしていた売上が上がりました。別に私は「不思議な世界」に興味はありませんが、事実だから認めざるを得ません。最初は恥ずかしがっていた従業員も、慣れてくると店内でも積極的に働くのだそうです。お客さんからの評判も良くなりました。また、ある店では社長自ら外へ出てチラシ配りをしたところ、従業員も積極的に配るようになり、売上が上がりました。社長も、来店してくださるお客さんの「ありがたさ」を再認識したとおっしゃっていました。
これほどまでに人の管理、モチベーション(やる気)アップは重要で、しかも2件の例は共に人件費増をすることなく売上アップを達成しています。とりあえず、スグにでも売上アップを図りたい方は、ご参考にしてください。
今後、このコーナーでは、3本柱について具体的に売上アップ手法を解説していきます。
次回は「マーケティング、誰に何を売っているの?」を予定しています。
                              加藤経営研究所 加藤泰輔